食べる順番

意識すると食べたいものや満足感がかわります

現代の日本では、癌、糖尿病、高血圧など生活習慣からくる病気が大半をしめています。ということは、正しい食生活がどういうものかを理解していない人が多いから、生活習慣病になっていると言えます。こうした背景から、多くの食事法や運動法が開発され、日夜紹介されています。しかしそのほとんどが〇〇病を予防するにはこの生活、ダイエットしたいならこの生活といた具合に、症状や疾患ベースの為、自分にとってはどういった食生活があっているのかがわかりません。

アーユルヴェーダの良いところは、個々の体質や現在の不調、年齢、季節に応じた食生活についてわかりやすく説明しているところです。そしてそのベースには自然界のリズム・摂理と協調した生き方があります。日本人の食生活は戦後激変し、それにより日本人はかつて経験しなかった多くの病気に苦しむようになりました。現在の便利になった食生活を捨てることはもはや現実的ではありません。また自然とかけ離れた生活をしていることから、本来どう生きるのが人間らしいのかという事も忘れてしまっています。ですから、アーユルヴェーダを通して、どうすれば体調のバランスを整えることができるのかを知り、その上で現代の便利さを摂りいれるのが良いと思われます。

今回はもっとも手軽に取り入れやすい食べる順番と食後の過ごし方について、アーユルヴェーダの教科書ススルタサンヒター第1巻第46章より読み解いてみたいと思います。

食べる順番

奉仕の医師は、王様がまず甘い料理を次に酸味と塩味のものを、そして食事の終わりに辛い物その他を摂るように注意してみていなければならない。 サトウキビの如きものは食事の最初にくうべく、決して最後に食べてはならない。 注 食事のはじめに食べる甘い食料は自らの胃の中のヴァータを抑えることになり、中間に摂られる酸味または塩味は、膵臓(agnyashaya)に宿る消化の火をかきたてる。そして終わりに食べる辛味はカファを抑える傾向がある。ススルタサンヒター第1巻第46章

アーユルヴェーダでは、食事は甘いものから食べ始め、次に酸味と塩味のものをそして辛いものを後で摂るようにすすめています。甘い味は、他の味に比べて滋養強壮作用が強く、消化に時間がかかることから、消化力が一番高い最初に食べることで消化不良を起こさないということを意味しています。

アーユルヴェーダが書かれた数千年前には、完全に精製されたもの、人工的なもの、添加物の入ったものはありませんでしたので、ここで言う甘味とは、穀類、野菜(イモ類、かぼちゃ、ニンジン)、精製されていない砂糖、肉類、はちみつなどをさしています。

現代人は血糖コントロールが不安定になりやすく、糖尿病の人、糖尿病予備軍の人が多数いることから、血糖を上げにくい野菜から摂り、最後に甘いものを食べなさいという考えが浸透しています。精製された炭水化物、糖質を止められない方ははじめはこのやり方も良いと思います。

しかしそもそも精製された炭水化物や糖質を摂ることの体や心への害を認識し、徐々に減らしていくのが望ましいです。

特に夕食後にデザートやお菓子を食べる習慣がある方は、慢性的な消化不良や腸炎をおこし、多くの不調を抱えている方が多くみられます。少なくとも寝る3時間前には食事を食べ終え、夕食後のデザートを止めるだけで体調は大分かわります。

食物で料理してから時間の長くたったもの、冷たく硬くなったものなどは温めなおしたり、浸透の不完全なもの、また焼けて無味となったものなどは食物として役に立たない。

これは現代人にとってはもっとも耳が痛いところです。忙しい生活の中で作り立ての食事を温かいまま摂れる人は多くありません。しかし、私達の食事は単にカロリーを入れているだけではありません。作ってから時間がたったものは栄養素が失われていくことは周知の事実ですが、プラーナと呼ばれる生命エネルギーもまた減っていくとアーユルヴェーダでは考えます。例えば、畑から摂れたての野菜をしばらく放置しておくと、ヒゲがのびたり、芽が出たりしますが、これは野菜の中にプラーナが多くあることの証拠です。このプラーナが多く含まれている食材をとることは、体だけでなく、心やソウルのレベルでの栄養になります。

食事中には白湯をすする

食事の献立としては順次にうまくなるように皿を出すようにする。食事の経過中には口はしばしば洗ったり、うがいしたりすべきである。それは口蓋がかくして常に清潔にせられ、味が良くわかるようになり、その後で食べたものが何でも一層美味にぜられ、すべてが最上のひとくちのような快味を与えるためである。食事の初めに口蓋を甘い味で犯すと次の料理の味がわからなくなる。ゆえに口は料理と料理の感覚において洗わねばならない。甘い食物をよい味で食べると精神を愉快にし、歓喜、エネルギー、血から及び幸福を次々と生じ、身体の発育に寄与する。しかるにこれと反対のものはその結果も反対である。何度食べても味を覚えない食物はその人に好適(svadu)であると考うべきである。食事が終わったならばちょうど良い量の水を飲むべきである。歯に張り付いた食物は楊枝を使って静かにとらねばならない。しからずして放置すれば、一種の悪臭が口中に生ずるであろう。ススルタサンヒター第1巻第46章

アーユルヴェーダの時代から、食事を出す順番にいかに気を配っていたのかという事がわかり面白い部分です。そして、最後まで美味しく食事を頂くために、味が変わるごとに口を少量の水でゆすぐことをすすめています。食事中は、お白湯をすするようにします。口から摂りいれた飲み物は約1-2秒で胃に到達するため、もし物理的に冷たいものを摂ってしまえば、胃が冷えて消化不良の原因になります。また味がある飲み物をとれば、食事の味を十分に感じることが難しくなるので、食事の間には白湯をすするようにするのがすすめられます。

食後には渋い、辛い、苦いものをとる

ヴァータは消化が終わると増加する。ピッタはその経過の途中に、カファは食事の行動後ただちに増加する。ゆえにカファは食事の終わった時に抑えなければならない。そして賢明な人は食事の終わりにその目的を達するために渋い、辛い、または苦い果物を摂り、またはビンロウジの実の細片、樟脳、ナツメグ、丁子などで調製したキンマの歯を噛み、あるいは喫煙したり、また他の方法で口中の粘液を除き、そのもの自身のエッセンスを染み込ませるようにする。ススルタサンヒター第1巻第46章

日本では食後に緑茶を1杯飲む習慣がありますが、これは理に適っていると言えます。しかし緑茶の渋みは体を冷やし、乾燥させ、カフェインもありますので、1日を通して緑茶ばかり摂ることはすすめられません。特に冷たいペットボトルのお茶は、体をキンキンに冷やしてしまいます。どんなものも摂るタイミングと量が大事であるといえます。

食後の過ごし方

それから食べた人は王様のように食事による倦怠の感が除かれるまで休息をとらなければならない。その後で彼は100歩歩き、床に入って左側を下に横たわる。食後は柔らかな音楽、快い歯科医および味、甘い香り、軟和な接触、短く言えば魂を恍惚たらしめ、精神を歓喜で包むようなものを楽しむべきである。 というのはかかる愉快な感覚は大いに消化の経過を助けるからである。 ざらざらしたりギーギー言う音、憎々しい視界、固くて不快な触覚、腐った不快な臭いなどが食後にあるとき、または不純な呪うべき米飯を食べ、あるいは大声に腹を抱えて笑うようなことは後で嘔吐を起こすものである。 食後の昼寝は、長時間続けてはならない。火の前で温まること、太陽への暴写、旅行、車行、入浴、水泳などは、満腹の食事の直後は避けるべきである。ススルタサンヒター第1巻第46章

1日および1生を通して人間が使えるエネルギーは決まっていると言います。例えるならスマホを充電したら1回のフル充電で使える時間は決まっていて、また充電していたとしてもいずれは使えなくなるようなものです。そしてスマホも過度な使い方をすれば消耗が早くなるのと同じように、人間のエネルギーも正しく使わないと消耗が早くなります。特に人間の場合は、口から食べたものを消化して自分の体を作っていることから、その消化と代謝に多くのエネルギーを使っています。

誰でも1日に使えるエネルギーの約60%は消化に使っていると言います。もしそこに食べ過ぎ、消化に負担がかかる食事(揚げ物、乳製品、生の魚、ジャンクフードなど)を摂っていれば1日のエネルギーのもっと多くを消化につぎ込んでいることになります。

ですから、以下に消化に負担をかけない食べ方や生活を行うのかというのがキーワードになります。アーユルヴェーダでは食後ゆっくりすることで消化・吸収を促すことを進めています。かといって寝てしまうと消化できませんので、体を休めたり、軽く散歩したりしながらリラックスして過ごすことをすすめています。

いかがでしたか。食べる順番、食べ方、食後の過ごし方を変えるだけで、長年の不調が改善する人は多くいます。是非今日から実践してみてくださいね!