ヴェーダでは行為の結果(カルマ)としてジーヴァ(個々の魂)はサンサーラ(輪廻転生)を繰り返し、カルマを解消するか、悟りを得るまでは生死を繰り返します。そしてこの世に生を受けて、人生の目的(ダルマ・アルタ・カーマ)を求めて行う活動のすべては、3つのグナ(サットヴァ・ラジャス・タマス)が組み合わさったものです。この3つのグナが結びつくことで、”私の”とか”私のもの”という思いが生じます。食べ物などの物質、場所、喜びの対象、時、知識、行為、信念、意識の状態、運命はすべて3つのグナによって構成されています。

サットヴァ

サットヴァの働き

心と感官の支配、忍耐、識別、宗教的義務の遂行(または苦行)、真実、慈悲、良き記憶力、足ることを知る、自己放棄(寛大さ)、無欲(離欲)、信念(神や死後の世界を信じる)、謙虚、悪から離れる、布施、アートマンに満足する。バーガヴァタ・プラーナ第11巻第25話1-8

サットヴァが優勢な人

何一つ見返りを求めずに、聖典に記された義務を果たしてバクティにて神を礼拝します。明るく純粋で平和に満たされ、幸福で、智慧があり、敬虔です。感覚器官は鎮まっていて、心は澄みきり、執着が消えています。いずれは悟りを得ます。サットヴァの人はアートマンを信じます。

サットヴァが優勢な時には神々の力が増大します。

意識は覚醒しています。

サットヴァの状態の人は、ヴェーダが定めるダルマを守り、より高く昇っていき、ついにはブラフマローカ(ブラフマーの世界)に達します。臨終時にサットヴァが優勢であれば天国に行きます。

森はサットヴァな住まいです。

健全で清らかな自然と手に入れた食べ物はサットヴァです。

ラジャス

ラジャスの働き

感官の楽しみを求める(欲望)、活動的、傲慢、強い願望、この世的繁栄を求める、差別観、自己満足、好色、好戦的、名誉を求める、他のものを馬鹿にする、権力を誇示して力を行使する。バーガヴァタ・プラーナ第11巻第25話1-8

ラジャスが優勢な人

この世の楽しみを求めて自分の義務を果たしながら神を礼拝します。祭式などこの世的な義務を信じます。その人生は名誉、財産を求めて活動に専念するため、不幸と不安に苛まされます。理性は乱され、感覚器官が安らぐことがなく、行為器官も落ち着かず、注意散漫に陥ります。

ラジャスが優勢な時、アスラが強大となります。

意識は夢眠の状態です。

ラジャスに支配された人は、人間として生まれ変わり絶えず中間の世界を動き続けます。

都会や村やラジャスな住まいです。

舌を喜ばせる食べ物はラジャスです。

タマス

タマスの働き

怒り、貪欲、虚言、凶暴、人に物を乞う、偽善、不活発、すぐに争う、悲嘆、迷い、陰気、無感動、よく眠る、期待、恐れ、怠惰。バーガヴァタ・プラーナ第11巻第25話1-8

タマスが優勢な人

嘆きと迷い、暴力、眠りに耽って、他人に援助を求めます。理解力は失われ、心は対象を正確にとらえず曖昧となり、働きは停止し、無知と落胆に圧倒されてしまいます。このため不正義を正義と信じます。無明(酒やドラッグなど)や他への依存に喜びを感じます。

タマスが優勢な時は、ラークシャサが力を満ちます。

意識は熟睡の状態です。

タマスに支配された時には、魂はより低く低く落ちていき、やがて動かぬ生き物(植物)として生まれ変わります。臨終時にタマスが優位なら地獄へ落ちます。

賭博場はタマスな住まいです。

不健全で不純な食べ物はタマスです。

トリグナを超越した状態を目指す

サンサーラ(輪廻転生)を抜け出すには、トリグナを超越しなければなりません。心に現れるグナを支配して、バクティヨーガにて悟りを得ることによって神と一つになると聖典では言っています。

サットヴァ、ラジャス、タマスのどの状態にあるかによってステップはことなります。まずはサットヴァを増やし、ラジャスとタマスを制圧しなければなりません。そのために感覚器官をコントロールし、欲望への執着(あれ食べたい、ここへ行きたい、などなど)を捨て去ります。さらに理性を鎮め、サットヴァを無欲にて制圧します。こうして心からすべてのグナが取り除かれたなら、そのジーヴァ(輪廻転生する魂)は微細身を捨て去り、神の元へ至ることができます。

この微細身から解放されたジーヴァは寿命が来るまでは肉体はこの世に留まりますが、パラブラフマンによって満たされるため、外にも内にも戻ることがなくなります。つまり現象世界はマーヤ―でできたものと理解するので、幻想に過ぎない感官の世界に住んでいても外界の対象を楽しむことなく、心でそれを楽しむこともありません。