この部門では、様々な毒によって引き起こされる病気や症状についての治療に関して述べられています。毒とは、生きているものと生きていないもの両方をさしています。生き物による毒とは、へび、蜘蛛、鼠、犬、蚊、昆虫など毒性のある生物にかまれた場合を含みます。また、生きていないものによる毒は、鉛、水銀、ヒ素や、トリカブト、ベラドンナなどのある種のハーブによる毒などを摂取してしまった場合を含みます。
トリカブト

この部門では、特定の毒に対する解毒剤や、毒素を体の外にだす様々な方法が述べられています。
また、毒の影響から出ている症状に対して、多くのハーブや、ハーブを組み合わせたものを内服や外用として使用する事をアドバイスしています。

アーユルヴェーダでは、正しいやり方で、適量処方された場合、ある種の毒物は薬としてもちいられます。鉛、水銀、銅、硫化塩、ヒ素、様々な金属、また、ルビー、ダイヤモンド、パールなどの高価な石も、広範囲にわたって使用されます。この部門では、様々な毒物の致死量に関する記載もあります。つまり、ヴィシャ・タントラ(毒物学)では、これら毒物に関するあらゆる詳細が扱われています。この分野では、悪魔にとりつかれた場合の精神の状態や病気の対処法が記載されています。しかしながら、この分野は古代では大変発達し使用されてきましたが、現代ではあまり使用されません。その主な理由としてこの科学に関して、その古典同様、専門家がいなくなってしまったことがあげられます。

このように、適切な古典や専門家がいなくなってしまったことで、この分野に関しては、様々な見解があります。「ブータ」という言葉に関しても専門家により異なった意味が説明されてきました。「ブータ」とは、幽霊やそれに似た悪い魂で肉体にある種の病気を引き起こすという人もいれば、「ブータ」とは、目に見えないほど非常に小さい有機体で、種々のウィルスやバクテリア、その他病気の原因となるものを示唆しているとする人もいます。

アーユルヴェーダでは、過去のカルマがある種の病気の原因であると信じていて、これもまた、直接 見たり知覚する事はできませんが、病気の原因であるとされています。アーユルヴェーダの内科医は時として、ある種の病気の原因や病原体をトリドーシャに関連づけられない事があります。多くの場合、その種の病気は、ラジャス(激質)やタマス(暗質)が原因となって病気が引き起こされている状態、つまり精神が阻害されて病気が引き起こされています。こららの病気は現代科学の精神医学の病気と比較する事ができます。

要するに、「ブータ・ヴィディヤー」は直接目で見る事ができない、トリドーシャでも説明できない病気の原因を扱う部門のようです。ただ一つ確かなことは、アーユルヴェーダが様々な病気やその段階についてとてもよく知っていたということです。このことからもアーユルヴェーダが完全なる医療科学であり、古代において非常に発達していて実行されていたという事が確信できます。