卵子と精子の出会いについて
生殖可能期間にある女性の卵巣では毎月原子卵胞（生まれながらに持っている卵子のストック）から卵胞が成熟し、排卵のタイミングで卵子が飛び出します。
排卵された卵子は、ラッパ管から取り込まれ卵管へ移動します。
卵子は卵管の中をゆっくり転がりながら子宮へ向けて移動し、その途中で精子と出会い受精します。
卵子の寿命は約1日（5時間程度という説もあります）それに対して精子の寿命は2-3日（個体差があります）なので、卵子が丁度待ち合わせ場所を通過するときに出会ったたった1匹の精子が卵子と結びつくことができます。
健康な男性では精子は1回の射精で2億匹とも言われていますので、その確率は2億分の１、さらに時間的にもタイミングが合っていない限り卵子とは出会えないことを考えると、宝くじよりもよっぽど奇跡的な可能性でしか受精は成り立ちません！？
排卵していても精子と出会えない時がある
排卵時には卵巣から卵子が飛び出しラッパ管へ取り込まれると説明しました。卵巣とラッパ管は直接つながってはいません。
ということは”卵胞から飛び出した卵子がラッパ管に取り込まれないことってあるの？”と思いませんか。
実はあります！ピックアップ障害と呼ばれています。
手のサイズや形、運動能力が人それぞれでキャッチボールが得意な人もいれば、どんなにいいボールが来ても中々取れない人もいるように、ラッパ管の形、サイズ、能力も人それぞれです。このため排卵の質が良く、排卵がスムーズでも、ラッパ管が卵子をキャッチできるとは限りません。
不妊治療専門の見尾保幸先生によると3-5回に1回の確率でしかキャッチしていないこともあるとか（汗）月経サイクルが正常で28日周期の人がいたとしても、ラッパ管が卵子をキャッチしているのが3-5回に1回とすると、1年間に妊娠できるチャンスは2-4回しかないということになります！！
ちなみにキャッチし損ねた卵子は、腹腔内にポロッと落ちて、体の中のパトロール隊白血球により異物とみなされ知らぬ間に退治されてしまいます。
このためお腹の中の小さな宇宙ではものすごいドラマがあるのですが、排卵しているかどうか、卵子と精子がであったかどうか、当の本人は気が付くことはないのです。
ＳＴＤ（性感染症）の１つであるクラミジアに感染すると、腹腔内に炎症がおき、癒着が起きるため、卵子とラッパ管の間にうすい膜ができてしまいラッパ管が卵子をピックアップできない状態になることがあります。またクラミジア感染症では卵管自体も炎症のため通り道が狭くなっていることがあります。このケースでは卵子は精子との待ち合わせ場所にいけませんので、自然に妊娠することは不可能です。
体外受精の成功率は1回目がダントツ高い
夫婦生活は問題ないのに中々妊娠しない（不妊症の定義では1年）方で、過去にクラミジアの感染歴がある、卵管造影検査（卵管の通過性を見る検査）で問題があると言われた方は、卵子と精子に問題がなくてもお互いが出会えていない可能性が高いです。
実は体外受精の成功率は1回目と2回目以降を比較すると1回目がダントツ高いのです。
これはピックアップ障害だけが不妊の原因で、卵子と精子は元気な方が体外受精であればすんなり妊娠するからです。
但し、体外受精にステップアップしたものの、受精卵（卵子と精子が結びついた）の質が良くない場合には妊娠の確率は低くなります。
20代-30代前半であれば夫婦生活が問題なくある場合、約1年で約9割のカップルが妊娠するといわれています。
1年たっても中々赤ちゃんができずにいるカップルであれば、不妊治療のクリニックに行って原因の精査をしてみるのをおすすめします。
実は色々検査をしても不妊の原因がわからないケースは全体の11％（WHOによると）を占めています。解明されてきていることも増えている一方、わからないことも多いのです。
体外受精は金銭的にも肉体的にも精神的にも負担が大きいです。中には何年も不妊治療を続けたのちに赤ちゃんを授かった方も少なくありませんが、辛くなってギブアップする方、経済面や肉体的、精神的ストレスに疲弊している方も少なくありません。
ただ もしご夫婦が強く赤ちゃんを授かりたいと考えていて 中々ご妊娠されず、原因もわからない ということであれば、期限や何回と決めて体外受精をトライするのであれば、現代だから出会える命の形なのかなと私は思えて肯定的です。
妊娠･出産して新しい家族を迎えるということは、自然の気持ちで特別なことではないように思います。
パートナーと出会い、妊娠、出産して新しい命のバトンを繋ぐということがいかに奇跡的なことなのかとあらためて感じます。
地球上に今生きている70億の命。この命は、他の多くの命のリレーによって、奇跡的な確率で繋がってるんだなと思うと自分の命を尊いものに感じます。
生きているだけで奇跡の存在なんだって思いませんか？
