アーユルヴェーダは肉食OK?

アーユルヴェーダというとベジタリアンなイメージがある方も少なくないと思いますが、アーユルヴェーダの古典チャラカサンヒターの中には、動物性の肉、魚、卵などについても記載があります。

アーユルヴェーダではこの世に存在するものには必ず価値があり、正しく用いられればどんなものも薬になるが、逆に使い方を誤れば薬でもあっても毒になるとしています。

激しい毒物でも、用い方によっては最良の薬物となることがある。逆に薬物であっても、誤って用いると、激しい毒物に転じる。チャラカ・サンヒター第1巻第1章126

ですから、特定の病気や症状においては特定の動物性食材が治療に使われます。ただし、正しい適用のポイントの一つとして消化・吸収できることがあげられますが、動物性のものはとかく消化に負担がかかるので、日常的に常食することはすすめていません。

特に干した肉、豚肉、牛肉、魚、ヨーグルトは常食すべきでないとしています。 チャラカ・サンヒター第1巻第5章⒑-11

肉を食べるなら冬

寒い初冬には、体力のある健康な人の消化の火は、冷たい空気と皮膚の接触によって閉じ込められて強くなり、食事の量が多くても、材料が消化しにくいものであってもよく堪える。そのような燃焼力のある火が適当な燃料を得なければ、身体に生ずるラサ(7つのダートゥ)に害を与えるので、寒い季節に冷たいヴァータが増大するのである。したがって寒い時には、水生動物(魚介類)や沼沢地動物の肉(ブタなど)と脂肪のスープ、油、酸、塩の味を加えて食するがよい。…乳製品、サトウキビから作った糖類、動物性脂肪、ごま油、新米の飯、温かい湯を初冬に常用する人にとって、寿命が短くなることはない。チャラカ・サンヒター第1巻第6章9-18

季節の中では初冬が一年の中で一番消化力が高くなるので肉を食べて良いとしつつも、”体力のある健康的な人”というのが前提なので、体力がない人、不健康な人、消化力が弱い人はこれに該当しません。

痩せすぎの人には肉が処方されることがある

痩せすぎの人に対して勧められる滋養強壮となる食事として以下のようなものがあげられています。

新米・新酒(醸造酒、ボジョレー)・家禽(鶏肉)、沼沢地生息動物(ブタ、ヤモリ、カエル)や水生動物の肉のスープ(魚のスープ、ブイヤベース、かつお出汁?)・加工された肉・ヨーグルト・ギー・牛乳・砂糖・シャーリー米・マーシャ(豆)・小麦・糖蜜類を飲食すること、

不眠には肉のスープ

アーユルヴェーダ的には不眠はヴァータという風のエネルギーが関係しているとしています。このヴァータのエネルギーのバランスをとることが快眠への第一歩となるわけですが、眠れない人へのアドバイスの中にも肉が出てきます。

アビヤンガ(オイルマッサージ)、強擦法、沐浴、*家禽(にわとり)や沼沢地生息動物(ブタ、カエルなど)や水生動物(魚)の肉スープを飲むこと、*ヨーグルト入りのシャーリー米、牛乳、油剤の使用、酒類、心の喜び、気に入った香りや音と接すること、サムワーハナ(優しく撫でること)、眼・頭部・顔面に油剤を使うこと、快適なベッド、快適な部屋、気持ちの良い時間、これらはいろいろな原因で得られなかった睡眠をすみやかにもたらす。チャラカサンヒター第1巻第21章52-54

肉食は摂り方を間違えると血液を汚す原因になる

アーユルヴェーダでは血液組織(ラクダダートゥ)は、ピッタ(火)ドーシャと関係しているとしています。このためピッタドーシャを乱すようなことをすると血液が汚れます。

腐敗したもの、あるいは過度に鋭性または温性の酒類、あるいは鋭性と温性の性質をもったその他のものによって血液は汚れる。(略)水生動物(魚)や沼沢地動物や穴居性動物や肉食動物の肉を摂取することによって、またヨーグルトや酸味の強いマストゥ(カッテージチーズ)やスクタ(酢)やスラー酒(酸味の酒)を摂取することによって、また誤った食べ合わせのものや腐敗したものや異臭のあるものを食べることによって、また日中に流動性のものや油性のものや消化重性のものを食べてすぐに寝ることによって、また食べ過ぎ、怒り、太陽や火のそばで作業をすることによって、嘔吐感などの欲求を無理に抑えることによって、(略)前に食べたものが十分に消化しないうちに再び食べることによって、または秋という時節の性質によって、血液は汚れるものである。チャラカサンヒター第1巻第24章10

血液が汚れるとピッタドーシャが乱れたような症状が出やすくなります。ピッタドーシャは、目、胃、十二指腸、皮膚などに多く存在しているのでこれらの部分にトラブルがでやすくなります。

血液が汚れると口内炎・眼の充血・鼻の悪臭・口臭・眠気を伴う倦怠感・月経過多・皮膚トラブル・消化力減退・喉の渇き・身体の鈍重感・灼熱感・極度の無力感・味覚不振・頭痛・食べ物が消化する過程で胸焼けを感じること・渋味と酸味の溜飲がたまること・肉体労働をしないのに倦怠感を感じること・過度の怒り・意識不明・口内の塩味・過度の発汗・身体の悪臭・酩酊・ふるえ・発声困難・倦怠・睡眠過剰・眼の前が頻繁に暗くなること・身体のかゆみ・じんましん・発疹・など。(一部省略)チャラカ・サンヒター第1巻第24章17

肉食&肉スープの最大の特徴は滋養強壮

身体を肥らせるものの中では肉類が 気分を爽快にさせるものの中ではラサ(肉のスープ)が 体力を与えるものの中では鶏肉が 十二指腸の欠陥、消耗、痔疾をなくすもののなかでは肉食動物の肉汁の常用が 最も顕著である チャラカサンヒター第1巻第25章40

肉食はこんな人に特におすすめ!

すべての生物にとって肉の煮汁は滋養を与え、健胃・強心である。消耗性疾患、病後の回復期にある人、痩せた人、精子減少症の人、体力と色つやを良くしたい人にとってはアムリタである。処方どおりに調理した肉スープはすべての病気を鎮静する。声と体力、知性、感覚器官、寿命を向上させる。運動、女性、酒に夢中になっている人でも、肉の煮汁を欠かさずに食事に取り入れていれば病気にならず衰弱することもない。チャラカサンヒター第1巻第27章312-315

肉の種類ごとの性質

アーユルヴェーダでは、食事は生命のすべてのレベルを滋養する必要があるとしています。下記に摂るべきでないとかかれている肉はタンパク質はあるかもしれませんが、その肉の中に生命力が乏しいこと、汚染されていることなどから体にも栄養として乏しいだけでなく、心にも悪影響を及ぼす可能性があるのでとるべきでないとしています。

自然死をした動物、やせた動物、太りすぎの動物、高齢の動物、若い動物、毒殺された動物、牧草地で飼育されていない動物(不自然な生育環境で育った動物)、蛇や虎などに噛まれた動物の肉は破棄すべきである。上記以外の動物の肉は健康によく、滋養、体力を増進する。チャラカサンヒター第1巻第27章311

肉類の性質は生息地とその餌に大きく関係しています。

水中や湿地帯で生まれた生物の肉はそのような場所で行動し重性の餌を食べるので重性である。これに対し乾燥地で生まれた動物の肉はそのような場所で行動し軽性の餌を食べるので軽性である。チャラカサンヒター第1巻第27章331-333

肉の部位と消化のしやすさは以下のようになります。

睾丸、皮、陰茎、臀部、腎臓、肝臓、直腸、胴体、骨付き肉は肉より重性  チャラカサンヒター第1巻第27章334-335 動物の運動量、性別による消化のしやすさは以下のとおりです。

活動的な動物の肉は活動的でない動物の肉より軽性である。性別では一般に雄肉の方が雌肉よりも重性である。同一種類の動物では、大型動物が重性で、小型動物が軽性である。チャラカサンヒター第1巻第27章334-335

代表的なお肉とその特徴

 雄鶏(クックタ)

油性、温性で精力増進、体力向上、音声明瞭化、体力増進、ヴァータ鎮静、発汗といった性質がある.チャラカサンヒター第1巻第27章63-66

 鶏の卵

精液減少(クシーナ・レータス)咳、心臓病、胸部外傷(クシャタ)に対して有益である.甘味で灼熱感を与えず速やかに体力をます。チャラカサンヒター第1巻第27章85-86

 豚肉(ヴァラーハ・ピシタ)

油性増進、体力向上、精力増進、疲労回復、ヴァータ鎮静、体力増進、食欲増進、発汗作用があり、重性である. チャラカサンヒター第1巻第27章76-80

 牛肉(ゴー)

特にヴァータ性疾患、慢性鼻炎、間欠熱、乾性の咳、疲労、過剰な消化力、筋肉の減少に有効である チャラカサンヒター第1巻第27章76-80