只今、歌舞伎座では、インドの叙事詩【マハーバーラタ】を題材にした演目が上演されています。

既にご覧になった方も多いと思いますが、私もやっと観劇することができました。

マハーバーラータとは

「マハーバーラタ」は、「偉大なバラタ族の物語」という意味です。作者は、物語にも登場する聖仙ヴィヤーサとされています。原本はサンスクリットで書かれ、全18巻100,000詩節200,000行を超えるとされる長編の叙事詩です。

インドではこの「マハーバーラタ」を題材にしたドラマが過去に放送されましたが、1話45分の内容が120話にも及んだと言います。

物語の中心は、同族同士の王座をかけたクルクシェートラの戦いです。この戦いの中で、血族の戦いの意義に葛藤する戦士アルジュナをクリシュナ神が教え導いていく部分は『バガヴァッド・ギーター』として知られています。

マハーバーラタ語の中には人間が生きている間に遭遇するすべての感情が盛り込まれていると言われるほど、多くの魅力的なエピソードとともに「生きることの意味」「人生を通してやるべきこと=ダルマ」について描かれています。

歌舞伎での上演に至った理由

インドの壮大な叙事詩マハーバーラタを新作歌舞伎として一から創りあげるに至った経緯について、主演の尾上菊之助さんが語っています。

本作品の演出は、静岡県舞台芸術センター(SPAC)の芸術総監督であり演出家の宮城聰が担当しています。宮城氏は、2014年7月世界最高峰の演劇の祭典「アヴィニョン演劇祭」(フランス)で、20年ぶりの日本人演出家の作品として『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』を上演しました。この作品を菊野助さんが見て、【これは歌舞伎になる!】と直感したそうです。

血の繋がりのある二つの勢力が、権力争いをし、その物語は神様が密接に関わり、道徳、哲学、宗教を交えながら、絶望的な大戦に向かって行き、どうしてそれが起きたかについて語られています。 また、物語に登場する人物は、どの人物もたいへん魅力的で、個性豊かです。紀元前に書かれたインドの叙事詩ですが、現代にも通じる濃密な人間ドラマに魅力を感じます。菊之助が語る、インド叙事詩「マハーバーラタ」の魅力とは

歌舞伎ならではの見どころ

私が感じた見どころとしては、インドの世界観を和で表現しているところ!歌舞伎だけに衣装は着物なわけですが、登場人物の特徴をよく反映したデザインになっています。例えば、5王子の二男ビーマ(風韋摩王子)の衣装には風の神様の子どもらしく風をイメージした渦巻き模様が施されていたり、インドラ神(帝釈天)の頭にはガンジス川が流れていたりと、細かな部分まで表現されています。また決戦の時に使用されるチャリオット(馬車)も動物と人間と乗り物が歌舞伎ならではの形で表現されていて、見ごたえがあります。

さらに100人兄弟の原作では長男ドルヨーダナを本作品では長女(鶴妖朶王女)として中村七之助が演じています。女性になっていることで、誰の中にもある人間の弱さや欲望、執着、嫉妬がより繊細な形で表現されているように感じます。最後の戦いの場面では、胸が熱くなり涙してしまいました。

漫画ワンピースを主題にした歌舞伎が昨年は注目されましたが、本作品マハーバーラータも長く上演される人気の演目になりそうで楽しみです!!

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