カーヤ・チキツァーは様々な病気の診断と治療を扱う最も重要な部門です「カーヤ」はサンスクリット語で「身体」を意味し、「チキツァー」は「治療」を意味します。つまり、「カーヤ・チキツァー」は身体の治療と薬を意味します。ここでの「身体」は単に肉体的な体だけではなく、精神、魂、感覚も含みます。

アーユルヴェーダで治療や薬というとき、それは、単に肉体に対してではありません。全ての治療や薬は、肉体に対してと同様に、どのように精神や魂を健康にするかということについても密接に関係しています。

処方についても、一見肉体に対してのみ出されるように思われますが、精神や魂に対しても強い影響力があります。ですから、、健康をとりもどすために処方されたいかなる治療・ハーブ・食事や生活法も、肉体と共に精神、魂、感覚器官にすべてに効果的でなければならないのです。そして、このことにより、アーユルヴェーダの治療、薬、ハーブは精神の健康にも最も伝導性があるのです。合成された化学薬品ではこの点がかけています。

病気の治療を行なうためには、まず、病理学を理解することが重要です。病気についての症状はきちんと理解されなければなりません。健康を維持するためにも病気の症状についての知識は、ある程度必要になります。また、より良い健康を維持するためには、食生活についての知識も重要となります。  また、様々な病気の初期症状について知っていれば、それらの病気を初期の段階で診断する手助けとなるメリットがあります。もし、病気が初期の段階で診断されれば、まだその病気が十分明らかになる前でも容易にくいとめられます。病気がこの段階であれば、家庭内療法(ホームレメディー)でもおさえることができます。

アーユルヴェーダはこのように、病気の最も初期の症状に対しても幅広い知識を与えてくれる、優れた科学なのです。そしてこれらの知識は「カーヤ・チキツアー」の中にもれなく説明されています。

アーユルヴェーダでは病気には6つの段階があるとしています。そして各段階ごとの症状と対処法が十分示されています。これらの知識を学べば、病気の進行を第一段階でくいとめることが可能です。もし、不注意で病気の進行を第一段階でくいとめられなかったとしても、アーユルヴェーダでは各段階の症状を説明していますので、病気が完全に発病してしまう前に、それぞれの段階でくい止めることが可能です。

このようにアーユルヴェーダは、病気に対し、とても系統だった化学的な方法で対処しています。アーユルヴェーダの治療では、病気の根源と、問題の起きている場所を見つけ出すことを目的としています。いったん病気の根源が決まれば、その病気の根をたやすために様々なハーブをブレンドしたり食生活指導を施します。ここで説明しておかなければいけませんが、アーユルヴェーダでいう薬とは、治療だけに限ったことではありません。良い健康を取り戻すためには、食事、ライフスタイル、運動、環境なども同じくらい重要な役割を果たしているのです。

上記の説明でも明確ですが、アーユルヴェーダの目的は、すべての人に健康と長寿を与えることにあります。アーユルヴェーダを学びたいと思っているのであれば、この基本的な秘訣を理解すべきです。現代では、多くの人が、生計をたてるためや、儲けるためにアーユルヴェーダを学び楽しんでいます。しかし、チャラカ・サンヒターの中で、以下のようにはっきり語られています。

アグニヴェーシャ(アーユルヴェーダについて初めて正当と認められる注釈を書いた人)は、病人や苦しんでいる人達を助けたいと思って、プナルヴァス・アートレーヤの元へアーユルヴェーダを学びに行ったとあります。アグニヴェーシャには、アーユルヴェーダでお金をかせぐために学ぶという意図はありませんでした。 アーユルヴェーダの本当に目指すところと目的を理解し、この素晴らしい科学を本当の意味で習得するためには、正しい方法に従わなければなりません。そうした人だけが成功することができるのです。

「カーヤ・チキツアー」では、診断についてのあらゆる詳細と病気の主な症状とその治療法について、十分説明されています。そして、大抵のアーユルヴェーダのテキストは、この「カーヤ・チキツアー」について説明していますが、「チャラカ・サンヒター」が、この部門の最も主流となる本であるとみなされています。「チャラカ・サンヒター」には、様々なテーマを扱う全部で120章が含まれています。この120という数字はなんらかの意義をもっているようです。なぜなら、他2つの古典、「kashyapaサンヒター」「Bhelaサンヒター」もまた、120章ずつとなっていて、もうひとつの重要な古典である「スシュルタ・サンヒター」もまた120章だからです。ただし、「スシュルタ・サンヒター」の場合は、ずっと後から付け加えられたと思われる「ウッタラ・タントラ」という章をのぞいた場合ですが。「ウッタラ」とはサンスクリット語で「後で」とか「後に」を意味します。

`シャーナ`「チャラカ・サンヒター」の章
・ スシュルタ・シャーナ:主にアーユルヴェーダに関する基本原則を扱う。30章
・ ニダーナ・シャーナ:主に病因学・病原学・診断学を扱う。8章
・ ヴィマーナ・シャーナ:主に病気を引き起こす肉体的要因、ハーブや薬とそれら治療薬の効能についての原則を扱う。8章
・シャリーラ:シャーナ:主に受精と胎児の発達を含む、人間の誕生と死に関する原則を扱う。8章
・ インドリヤ・シャーナ:主に様々な病気の予後と病人や健康人の定められた寿命をもとにした様々な症状の説明を扱う。12章
・ チキツアー・シャーナ:主に異なる病気の様々な治療法を扱う。30章
・ カルパ・シャーナ:主に催吐法、浄化法、浣腸法、呼吸法に関する様々な定則を扱う。12章
・ シッディ・シャーナ:主に管理したり取り除いたりする治療に関する原則を扱う。12章

このように、カーヤ・チキツアーがアーユルヴェーダの主たるテキストだと見なされていますが、チャラカ・サンヒターの中にはアーユルヴェーダの8部門すべてが取り上げられています。また、チャラカ・サンヒターには、非常に詳しい科学的方法で、病気に関する診断、予後、治療が扱われています。このことからもアーユルヴェーダが完全なる医療科学であり、一般に考えられているような単なるハーブや生活法などを扱う医療システムでないことが示されます。