子宮がんには2種類ある

一般的に子宮がんと呼ばれるものには、”子宮頸がん”と”子宮体癌”があります。この両者は、全く違う病気で、癌になる部位、原因、好発年齢が異なります。

”子宮頸がん”は、子宮が膣とつながっている部分、子宮頸部にできる癌で、HPVウィルスが主な原因と言われています。子宮頸部は膣とつながっているため、膣から長い綿棒を入れて子宮頸部表面をこすって細胞をとり簡単に子宮頸がんの検査をすることが可能です。このため、住んでいる市町村から子宮がん検査の無料券が送られてくると思いますが、これは”子宮頸がん”検診の健診で、健診を受けることで早期発見をめざす試みがなされています。

”子宮体癌”は、子宮の体部に発生する癌です。毎月の生理があるうちは、月経とともに子宮内膜がはがれ落ち、子宮内部がリセットされるため発症することはほとんどありません。このため、子宮体癌は閉経後の50代が好発年齢となっています。

ただし最近では若い年齢でもPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と呼ばれる病気で、排卵障害から無月経、生理不順になっているケースでは、子宮内膜も不正になりやすいことから、30歳以下の子宮体癌患者の60%でPCOSが診られたとういう報告があります(日本産婦人科学会)。このため若年者でも生理不順があり、不正出血があるケースでは子宮体癌の検査を行うことがります。

子宮頸がん 子宮体癌
発症部位 子宮頸部 子宮体部
組織型 80%扁平上皮癌 95%腺癌
好発年齢 20代から出現しはじめ30-40代で増加 50歳代にピーク
原因 発がん性HPVウィルス ホルモン依存型
初期症状 ほとんどなし 不性器出血

子宮頸がんを起こすHPVウィルスについて

HPVは皮膚にいぼを作るウィルスで多くの種類がありますが、その中でも13種類ほどが子宮頸がんハイリスク型と言って、子宮頸部に感染すると子宮頸がんを起こすリスクが高まります。

その中で世界的に最も頻度の高いものが16型と18型で両者を合わせると全子宮頸がんの60~70%を占め、感染後に悪性化するスピードが速く、癌化しやすい型とされています。

HPVウィルスの感染ルートは主に性交渉です。ただし、性交渉以外でも皮膚接触によってHPVウィルスに感染する可能性もあると言われています。

愛するパートナーが子宮頸がんハイリスク型のHPVウィルスを持っているかどうかを調べることは日本では今のところ実施されていません。なぜなら、男性はHPVウィルス保因者ではありますが、男性が感染した場合、ほどんどは免疫で治癒するからです。まれに高リスク型が持続感染し肛門がん、陰茎がんなどを引き起こすことはありますが頻度は女性の子宮頸がんほど高くありません。

是非知っておいて頂きたいのは、性交渉が一度でもあれば子宮頸がんを引き起こすHPVウィルスに感染している可能性があり、自然に自己免疫でウィルスが淘汰されることもあれば、5年10年とウィルスの感染状態が続いて癌化することもあるということです。

また子宮頸がんは、初期症状はほどんどなく、月経サイクルや月経時の諸症状として変化が現れるという事はほどんどなく、不正出血などで症状が出たころには、子宮全摘しなければならないくらいに進行しているケースが少なくありません。

そういった背景から、最も子宮頸がんを起こしやすいHPV16型18型に対するワクチンが作られ性交渉デビュー前の女性に予防的にうつということが世界的になされるようになりました。

確かにまだ歴史は浅いワクチンではあり、その効用については継続的な検証が必要ではありますが、既に120か国以上で承認されており、50か国以上で思春期の女子に対する予防接種が公費で行われています。

これだけ多くの国で子宮頸がんワクチンが承認されているのは、上記にあげたように子宮頸がんは主に性行為を通じて感染し、性交渉が活発な若い世代に発症しやすく、症状ないまま進行し命にかかわることがあり、ワクチンを打つことでの予防的価値が高いと考えられているからです。

子宮頸がんワクチンが問題となった理由

子宮頸がんを予防する目的で、日本でも公費対象として積極的にHPVワクチンの接種を開始されましたが、ワクチン接種後の様々な副反応が問題となりました。これに対し、厚生労働省は、すぐに専門家チームを集め検討会を開いた結果、定期接種の実施を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでした。その一方、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされ現在に至っています。

子宮頸がんワクチンに関しては以下の厚生労働省のページも是非参考にされてください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html

今回以下にリブログさせて頂いた記事は、HPVワクチンの副反応について検討していたチームの報告に捏造があった可能性があるという内容です。現役の産婦人科医の先生が丁寧に解説をされており、情報として知っておきたい内容だったためのせさせていただきました。

ワクチンを打つ、打たないという個人の選択があるのは当然そうあるべきだと思いますが、そのメリット、デメリットに関しては慎重に情報を集めつつ判断することが必要だと思います。

子宮頸がんについてのまとめ

  • 子宮頸がんの主な原因は性行為によって癌化しやすいタイプのHPVウィルスに感染することである。
  • 性交渉が1度でもある女性であれば、子宮頸がんにかかるリスクはある
  • 子宮頸がんは初期症状がほとんどないため、子宮がん検診で早期発見することが望ましい
  • 子宮頸がんは早期発見により治療できる可能性が高い
  • 子宮頸がんを起こす可能性が高いHPVウィルスは13種類あり、世界的に最も頻度の高いものが16型と18型で両者を合わせると全子宮頸がんの60~70%を占め、感染後に悪性化するスピードが速く、癌化しやすい型とされている。
  • 現在日本で導入されている子宮頸がんワクチンは2種類あり、そのどちらも16型18型に対するワクチンである。
  • 子宮頸がんワクチンは歴史が浅く今後も有効性に関しての検証が必要とされる一方世界120か国で導入されており、一定の予防効果が認められているものである。